先生方にICTを使ってもらうために必要なこと

教育

 ブログを始めてから初めて教育現場のことについて書いてみようと思います。今回は教育現場におけるICTを活用についてです。

 文部科学省が2021年に発表した「学校教育情報化の現状について」によると、

「児童生徒に課題や学級での活動にICTを活用させている」教員の割合は小学校で24.4%、中学校では17.9%

なのだそうです。やけに低いなぁと思いましたが、これはTALIS(OECD国際教員指導環境調査)2018の結果ですので、GIGAスクールが始まる前の状況のようです。他に指標がないか調べてみましたが、すぐには見つけられませんでした。肌感覚ではこれ以上の割合になっていると思います。

 それでも十分にICTを活用できているかというと、まだ不十分だろうと思います。私自身は授業の100%をICTで行うべきとは思っていないので、ICTを使わない場面があって当然だと思っています。ただ私の学校の場合、生徒の端末はBYODですので、生徒に購入を課している以上、何のために買ってもらったのか(つまり何のために端末を使うのか)を明示する必要があります。そのときに、ほとんど使っていないという状況は避けなければいけません。(特定の教科・科目でしか使っていないというのもまずい)

 GIGAスクールによって教育現場におけるICT活用の「環境」は整いつつあると思います。また、文部科学省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」を見ても、教員がICTを活用する能力は年々アップしています。

 ということは「教員にICTを活用する能力はあるけど、教育にICTを十分に活用できていない」という状況ということでしょうか。

 自分の住んでいる地域でいうと、小学校や中学校でのICT活用は進んでいて、高校が遅れ気味であるように感じています(実際にすべての学校を調査したわけではないので、あくまで感覚です)。その要因の一つに、教員の年齢が関係しているのではないでしょうか。気になったので学校別に各年代の割合を調べてみました。

 小学校 50代32% 40代22% 30代28% 20代19%
 中学校 50代34% 40代23% 30代28% 20代15%
 高 校 50代42% 40代26% 30代22% 20代10%
 ※公立学校年齢別教員数(2020 年度 文部科学省)

 高校は半分近くが50代の先生だったんですね。初めて知りました。やはりICT活用を推進する若い年代の先生方の割合が高校では低いことが分かりました。

 ICTってやっぱり初めはとっつきにくいです。私も自分で使い始めるまでは、「特に使わなくていいかな」程度にしか考えていませんでした。最近若い人たちの話題についていけなくなってきていますし、新しいことを始めようという気力も弱くなってきています。きっと私の上の先輩方はもっと手を付けにくいだろうと思います。

 ただ、私の場合は「使ってみたらとても便利」だということに気づき、それ以来手放せなくなってしまいました。始めてみると使い方も意外と簡単で、「これ」ができれば「あれ」も「これ」もというふうに繋がっていきます。使い方を身につけるのに最初は時間がかかりますが、あとの仕事が効率化されて、最初の損を取り戻すことができます。つまりICT活用能力習得にかかる時間を「投資」するわけですね。

 今回のタイトルは「先生方にICTを使ってもらうために必要なこと」としましたが、私の考えの核心はまさにここにあります。つまり「まず使ってもらうこと」です。そして使っていくつにその便利さに気づいてもらうということです。

 おそらくガラケーから初めてスマホに買い替えたときに、最初はどうやって操作したらいいか分かりませんでしたよね?説明書もついてませんし。でもいじってく内にだんだん使えるようになります。使っていく内に、やってみたいことが生まれて、分からないことを調べるという行動に移ります。このプロセスが大切だと思います。

 ICTを使い始める前の私のように「使わなくてもいい」と思っている人に使ってもらうにはどうするか。答えは簡単。「業務にICTを活用する」ことです。

 間違ってはいけないのは、「効率化」とか「便利」だからICTを取り入れるのではありません。あくまで「使ってもらう」ためです。紙でも黒板でもICTでも、どの方法にも一長一短あります。でも使わないとその「長」と「短」は分かりません。それが分かった上で使わないという選択もアリです。とにかく大事なのは「使ってもらうこと」です。

 ICTの研修では、「ICTは手段であって目的ではない」という言葉をよく耳にします。私はこの考えに半分賛成、半分反対です。ICT活用推進の過渡期にあっては、ICT活用を目的とすべしと考えます。

 私は進路指導部長になって、打ち合わせをほとんどペーパーレスにしました。最初はMicrosoft OneNoteを使い、今はGoogle Classroomを使っています。私が会議のレジュメを紙で用意しないので、先生方は「仕方なく」タブレットを持ってきます。会議中にリアルタイムで記録されていくのを見て、「これは便利だ」と感じてくれます。そしてついに「これは便利だ」ということで自分から使ってくれるようになりました

 進路指導部は来客が多く、これまで紙のカレンダーに来客予定を記入し、対応の依頼も紙で行っていました。今年度から職場でGoogleカレンダーを使えるようになったので、あっさりこちらに移行しました(最初の2ヶ月くらいは紙と併用)。アポの電話を受けた先生がカレンダーに書き込むと、進路指導部員にメールが届きます。それを見た部長は対応者を決めてカレンダーを編集します。すると対応者もそれを見て来客対応します。こんな流れを作ることができ、今ではもう紙のカレンダーは使っていません。

 これは一例ですが、私の職場ではこんな風にICTを使ってもらうように仕向けています。幸い先生方も理解してくださっており、ICT活用に協力していただいています。校内研修も豊富に行って、難しいと感じる先生のフォローもしています。まずはできる人が「業務」に取り入れて先生方を巻き込んでみてはどうでしょうか

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